いきなり王子様


「あ、悪い。もう少し筋道たてて話すつもりだったんだけど、笹原の名前とか出たから、俺も焦った」

ははっと笑うその声には、相変わらず重い雰囲気も感じられて、切なくもある。

「奈々を好きになった理由、ちゃんと話そうと思ってここに連れてきたんだけど。うーん、どこから……」

私を見つめて、ゆっくりと、何かを教えてくれようと口を開いた竜也。

私も、じっとその言葉を待っていると。

リビングのドアが大きな音を立てて開き、同時に

「竜也おにいちゃんっ」

女の子の高い声が響き、竜也と私は声の方に視線を向けた。

「おにいちゃんっ、待ってたよ」

たったっと小気味よく走ってきた女の子は、セーラーカラーのワンピースが良く似合う可愛らしい女の子。

肩までのまっすぐな髪を揺らしながら、大きな目を私たちに向けて。

私にも小さく頭を下げて挨拶してくれる。

「ママが教えてくれたけど、おねえちゃんは、おにいちゃんの大切な人?
……あれ?」

綺麗な目が私をとらえて、その瞬間大きく見開かれた。

えっと、小学生くらい?

じっと私を見つめるその瞳は、何かを思いだそうとしているよう。

……あまりにもじっと見つめられて、どきどきするんだけど。

思わず私も見つめ返して、曖昧に笑っていると。

「あれ?」

次にそう呟いたのは、私だった。

そして、私と女の子は、はっとしたように

「「あーっ」」

お互いを指さしながら、驚きの声をあげた。


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