いきなり王子様
「さ、こっちでゆっくりとお茶でも飲んでてね。せっかく来てもらったんだけど、もうすぐ出かけるのよ。璃乃の事、よろしくね」
テーブルにお茶を用意してくれた竜也のお姉さんは、申し訳なさそうに小さく頭を下げた。
ショートカットがよく似合い、長身でスリムな立ち姿はとてもきれいで、女の私でも見とれてしまうほど。
竜也がモデルをしていたというけれど、もしかしたらお姉さんもそうなのかもしれない。
メイクが濃いわけではないし、身に着けている服だって、小さな子供と遊びやすいように考えてかロールアップしたジーンズと、綿のTシャツ。
シャツは丸襟で、淡いブルーのレースリボンがあしらわれている程度のあっさりとしたもの。
けれど、スタイルの良さゆえか、目がいってしまう。
「あまり遅くならないように帰ってくるから、それまで竜也と奈々さんと仲良くしていてね」
「うん、大丈夫。お兄ちゃんと奈々ちゃんと一緒に待ってるから、璃久のサッカーの応援をしてきて」
璃乃ちゃんは、お母さんの側に駆け寄って、そっとTシャツの裾を掴んだ。
大きく笑った横顔は、とても優しくてお母さんの事が大好きなんだろうな、とすぐにわかるほど。
竜也のお姉さんは、そっとしゃがんで璃乃ちゃんと目の高さを合わせると、小さくため息を落とした。