いきなり王子様
竜也の無言の言葉は、その視線に乗せられて届く。
きっと、『あとで、ちゃんと話す』というような意味だろう。
どう見ても楽しそうにしている璃乃ちゃんの横で、苦笑しながらも、温かく愛情あふれた目で彼女を見ているその顔には、会社で見せる表情とはまったく違う印象しか浮かばない。
ただ冷たいだけではないけれど、どこか人と距離を置き、自分のペースで仕事も私生活も進める人だという先入観しかなかった。
けれど、昨日今日の短い時間だとはいえ、私の勝手な思いは徐々に変わってきている。
「ねえ、璃乃ちゃん、竜也お兄ちゃんって優しいね」
相変わらずもぐもぐと食べている璃乃ちゃんに、そう問いかけると、
「うん、すっごく優しいっ。いつも璃乃と遊んでくれるし何でも買ってくれるの」
「なんでも?」
「そう。このまえも、璃乃が欲しかったなわとびを探してきてくれたの。
パンダの顔を持って跳ぶ縄跳びで、旭くんとおそろい」
ふふん、と嬉しそうに笑う璃乃ちゃんから、隣の竜也に視線を移すと、ふと思い出したように肩を竦めて教えてくれた。
「なわとびの、握る部分がパンダの顔になってるんだよ。
なかなか見つけられなくて、工場の女の子にも探してもらってようやく見つけたんだ」
「ふーん」