いきなり王子様


「おい、あんまり誉めると調子にのるからやめておけよ。
璃乃、ピアノと絵ばかりで全然勉強しないって、姉貴にいっつも叱られてるんだ」

肩を竦めてため息交じりの声。

視線を上げると、ちょうど璃乃ちゃんの側に立った竜也が璃乃ちゃんの頭をくしゃりと撫でた。

言葉の厳しさとは正反対の、愛しげに璃乃ちゃんを見つめるその様子には勉強をしろと急かす気持ちも、ピアノを弾くことも絵を描くことも止めるつもりはないんだろうとわかる。

姪である璃乃ちゃんが楽しそうに笑う顔を見ているだけで十分だとすぐにわかるような、そんな顔を自分がしているって、竜也は気付いているのかな。

「璃乃、ちゃんとお勉強もしてるよ。宿題忘れたことないもん」

「そっか。それは偉いな」

「うん。時計を見て時間が言えるようにもなったし、璃乃は偉いんだよ」

えへん、と聞こえてきそうな声。

璃乃ちゃんは、竜也に誉められて一瞬飛び上がるほどに喜んだ。

竜也のことが、本当に好きなんだな。

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