いきなり王子様
竜也が側にいるから、璃乃ちゃんはお母さんと出かけずにお留守番をしていても全く寂しそうには見えないのかな。
むしろ、さっき璃乃ちゃんのお母さんが出かける時は今以上ににこにこしていて嬉しそうだった。
どちらかと言えば、早く出かけて欲しそうにしていたし、弟の璃久くんとお母さんが過ごす時間に何の戸惑いもなく手を振って見送っていた。
お母さんだけではなく、お父さんまでもが璃久くんの応援に行って、家族の中で自分一人が家に残ることに、戸惑いも切なさも、弟への嫉妬も感じられない。
しっかりした女の子だと言えばそれまでだけど、それにしてもあまりにあっさりしている。
かといって両親や璃久くんを嫌っているわけでもなさそうで、しばらく考え込んでいると、次第に私にはその理由がわかるような気がしてきた。
決して嫌いではない両親といる事に、気詰まりを覚えているのかもしれない璃乃ちゃんの心は本人にもちゃんとわかっていないかもしれないけれど、もしも私が経てきた子供の頃と同じ心情を持っているとすれば。
璃乃ちゃんは今、とても苦しいはずだ。
大好きな家族と一緒にいることが重荷に思える毎日は、子供にとっては抱えきれない苦しみ。
……過去の私が、そうだったから。