いきなり王子様
思いがけず届いた言葉に、私は必要以上に反応してしまった。

親ばかなんて、竜也の口から聞かされるなんて予想外。

姪である璃乃ちゃんをここまでかわいがるだけでも意外なのに、まだ存在すらしていない彼自身の子供についての思いを聞かされて、それ以上何も言えないまま、ただ竜也を見つめるだけ。

「まあ、奈々が俺の子供を産んでくれたら、かなりかわいい子が産まれるんだろうな。そうなると、やっぱり親ばか確定だ」

「わ、私が、竜也の……」

「そう。俺と、奈々の子供」

ブランコを楽しんでいる璃乃ちゃんをにこやかに見つめながら、竜也は平然とそう言い放つ。

私の腰に回したその手からは、その言葉は本気だとでも言うような熱が感じられる。

私と竜也の子供。

こうして一緒にいる事に慣れるだけで必死なのに、そんな私の心なんてお構いなしに未来を見据えている竜也。

私はやっぱり振り回されていると、改めて実感する。

昨日からの一連の流れに混乱しながら、何一つ落ち着いて考えられないけれど、ただ一つ確実なのは、思っていた以上に竜也が強引だという事。

そして、大切なものは本気で大切にするという事。

美散さんやモーニングで食べたマーガリン。

そして璃乃ちゃん。

自分の懐に収めて大切に慈しんでいるような、竜也の愛し方は、なんだかむずがゆくて照れくさい。

そして、そんな竜也を愛しく思える自分にも気づくと、私自身も、竜也のその懐に入れてもらいたいと願って、切なくなった。

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