唇の観察会 【密フェチ】
私の作った料理が、次々に彼の口の中へ収められていく。
休むことなく動く唇。
時折覗く白い歯。
リズミカルに咀嚼する顎。
飲み込むたびに上下する喉。
(ああ、見てるだけでうっとりする)
私はソファーの上で、彼の唇を肴にちびちびイタリアの赤を飲む。
(もっと見たい。彼が食べる姿を。
もっと、もっと)
そんな事に性的欲求を覚える私は、きっとアブノーマルの類だろう。
「先輩、本当に料理上手ですよね」
「料理教室に行ってたから」
友達に誘われてなんとなく通った料理教室。
一回7千円のそれは、完全にムダ金だと思ってたけど。
(こうやって彼を誘うエサになるなら、逆に安いくらいだわ)
自分が作った物を、彼に食べつくされる快感。
その興奮を悟られないように、でもその唇の動きを決して見逃さないように、注意深く観察しながらワインを飲む。