てのひらの


 掌、真っ赤だね。そっと、彼の耳元で囁く。

 酔っぱらってるみたい。彼は笑う。顔も赤くなっていた。

 見せて。彼の右手をテーブルの上に置く。わたしよりも一回りも大きい掌がよく見えるように、指で撫でるようにしてひらいていく。

 くすぐったいよ。彼は囁くけれど、わたしはやめない。



 絡まる指をほどいて、現れたのは熟れすぎた果実みたいな掌。


 指の腹で彼の掌を撫でて、その柔らかな肉に唇を這わせる。そっと。


 それからがりりと歯をたてて。

 滴り落ちる果汁ごと、全部。





 全部食べてしまいたい。



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