Dirty Hand (ダーティ・ハンド)【密フェチ】
Dirty Hand
私は折れた枝の様に、自然と地面へ吸い寄せられた。
地平線から見るこの世界はどこまでも暗く、黒かった。
この場所がどこでもいい。これ以上、何も見たく無い。
いくら歩いても、この世界には瓦礫の山と死の灰しかない事を、イヤと言う程思い知らされたから。
カサカサになった唇は何度も舐めても、ひからびたままだ。
二週間前に塗った、長時間保湿の艶々グロス。
その効果は、随分前に失われていた。
誰かの指先がこの唇に触れる事も、きっと無いのだろう。
「助けてぇ……ください」
何の意味も無い言葉を呟いた。誰に言うでもなく。
どうせこの世には、救ってくれる神様なんていないのだから。
< 1 / 5 >