捕獲完了
「じゃあ用事があるからそろそろ帰るね」
恥ずかしさが勝ち、そう言って席を立つ。
元々早く帰るつもりだったしちょうど良い。
そう思いながらも最後に彼に目をやると、琥珀色の瞳が私を見ていた。
嬉しい反面、やはり恥ずかしい。
鼓動は相変わらず高鳴っている。
私はなんとか逃げるように店を出た。
「ちょっと待って」
駅に向かって歩いていると彼の声が聞こえてきた。
振り返ると彼は意外と近くにいて、一歩踏み出せば彼との距離はなくなる。
「俺のことずっと見てたよね」
目の前には彼の唇。
少し視線を上げれば琥珀色の瞳。
やっぱり視線はそらせない。
「そんな風に見られると困る…」
そう言うと彼は一歩前に出る。
私の顎に手をやり上を向かせる。
そして瞳は閉じられ目の前にあったはずの唇が、触れた。