笑顔の向こう側 ~先生とわたしの軌跡~
わたしは抱きしめられた

先生の胸の中に、きつく抱き締められていた

何がどうなっているのか全くわからなかった

ただ、胸のドキドキが
先生に伝わっている
気がしていただけだった

『…先生?どうしたの?
まさか、酔ってるの?』

『俺、酒は弱くないよ』

そう言って、先生の腕にもっと力が入っていく

『俺…もう限界だよ』

『え?何?限界?』

ただ呆然としたままで
抱きしめられている
だけのわたしは、自分の身に起こっている事と
先生の言葉の意味が
理解出来ないままだった

先生は少し沈黙してから

『俺さ…お前の事が
好きでたまらない』

と小さな声で言った

わたしは耳を疑った

先生がわたしの事を
好きだなんてありえない

そんな事あるわけがない

自分のはちきれそうな
胸の中に向かって
言い聞かせるように
心の中で唱えていた

『ごめん。もしかして
手遅れだったかな』

先生の腕の力が抜ける

わたしを抱きしめる
手を離した先生は
わたしの顔を見ていた

何て言えばいいんだろう

先生は私からの答えを
求めているのはわかる

でも何て言っていいのかうまく言葉が出てこない
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