笑顔の向こう側 ~先生とわたしの軌跡~
『黒木の真っ直ぐな
気持ちが嬉しいよ』

予想外の台詞だった

『黒木が本気で悩んで
泣いて、そこまで俺を
想ってくれている事が
俺は本当に嬉しいよ。
本気でぶつかってきて
くれてる想いだけは
しっかり受け止めたよ』

わたしはそのままで
何も言えなかった

『でもな、今ここで
俺がお前を好きだとか
そういう事は言えない。
教師になったばかりで
余裕のない毎日の中で
これから先の黒木の
中学校生活にも影響が
出るかもしれないし。
わかってくれるよな?』

先生なりの優しい断り方

ここで泣いてしまったら先生が困ると思ったから必死に涙をこらえていた

本当は大きな声をあげて泣きたかったんだ

だけど、ただでさえ
告白なんて、先生を
困らせる事をしてるのにこれ以上、先生を
困らせたくなかった

『わかるよ。先生の
優しさも伝わった。
ごめんね、困らせて』

溢れそうになる涙を
我慢しながら言った

『全然困ってないよ。
ちゃんと俺の胸には
黒木の素直な気持ちが
伝わってきたから』

やっぱり優しい台詞を
選んで言ってくれる

そんなに優しくしないで

ますます先生を好きに
なってしまうから

もう恋は終わったんだ

どうせならはっきり
【バカな事言うなよ】
とか言って欲しかった

『大人が中学生相手に
するわけないもんね』

わたしはおどけてみせた

だけど先生の顔は
真剣な顔のままだった

『黒木のそんな考えは
絶対に間違ってるよ。
恋愛に決まりなんか
ないんだからな』

またわたしを見つめた

わたしの心の中は
我慢の限界だった

涙が沢山溢れてきた

止まらなかった

そんなわたしの頭を
なでながら、先生は




『ありがとうな』




って言ったんだ
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