笑顔の向こう側 ~先生とわたしの軌跡~
先生はわたしを
抱き寄せた

『夏海、愛してる』

先生の心臓の鼓動が
聞こえる

『わたしも先生の事
世界で一番愛してる』

キスをした

どこかで誰かが
見ているかも
しれないのに

そんな事は
気にしていられなかった

車に乗った
先生の脇に立ち
手を握り合った

離したくないこの手

温かくて大きな手

涙が出そうになる

でも必死に我慢した

笑顔でいようと
決めたんだから

『じゃあ、行くな』

『うん。気を付けてね』




ゆっくり、ゆっくり…




握った手を離した

わたしは思いっきり
笑顔で手を振った

走り去る先生の車が
見えなくなるまで
手を振った

先生の車が小さくなり
角を曲がって
見えなくなった

わたしの視界が歪んだ

ポロポロと涙が
こぼれ落ちた

我慢の限界だった

【夏海】

先生の声が何度も
リピートされていた
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