笑顔の向こう側 ~先生とわたしの軌跡~
わたしの部屋のベッドのすぐ隣に、先生用の
布団を敷いた

緊張で張り裂けそうな
心臓を
落ち着かせるように

『この窓から見える月がすごく綺麗なんだ』

と言うと、先生は
窓の外を眺めた

今日の月はわたしたちを照らすように
輝いていた

『俺も、部屋から同じ
月が見えるよ。
いつも同じ月を
見てるんだよな』

『うん。月を見てると
少しは寂しさが
和らぐの』

先生の手を握った

自分からそんな事が
出来るとは思って
いなかったけど
寂しさがそうさせた

ずっと我慢していた
寂しさが
溢れ出すように

『夏海?』

先生の驚いたような顔

『寂しかった。今まで
毎日会ってたのに
学校に行っても
先生は居ないし
夢に出てきて欲しくても出てこないし』

わたしは先生に
抱きついていた

自然に出た感情

言うつもりの
なかった言葉

先生を困らせる事
わかっているのに

ごめんね、先生

先生の目を見つめた
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