笑顔の向こう側 ~先生とわたしの軌跡~
『夏海、遅いよ!』

隣に立ったわたしにみどりが小さな声で一言

『ごめん、ごめん』

わたしは両手を合わせてみどりに謝っていた




始業式は校長先生の長い長いお話の後に新しい先生の紹介がある

早く終わればいいのに、あの校長、話が長いんだよなーなんて、あくびをこらえていた時だった

え?嘘でしょ?あの人…

…驚いてしまった

さっきぶつかった人が新任教師として紹介されわたしたちのクラスの新しい担任の先生だった

『山本高志といいます。3‐Aの担任です。
よろしくお願いします』

ちょっと低めの声で自己紹介をしていた

『結構イケメンだけど、私的には無しだな』

みどりが小声でつぶやく

わたしたちはまた笑った

この時はまだ、これから何が起きるかなんて想像も出来なかった

わたしの中の小さな心は何の変化も示さなかった

だけど先生のタバコの匂いだけは忘れてない

そして包み込むような温かさも残っていた
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