笑顔の向こう側 ~先生とわたしの軌跡~
少し歩いたその瞬間

『こらっ!』

わたしたちは恐る恐る
振り返った

わたしには誰の声だか
すぐわかったけど…

やっぱり先生だ

こらっ!と言いながらも顔は笑顔だった

『まったくお前たちは。見つけたのが
俺だったから
ラッキーだぞ』

先生は、ジャージの
ポケットに
手を突っ込んだまま

『どこ行ってきた?』

『凌の部屋』

みどりが答えた

『お前ら、本当に
仲いいんだな』

わたしとみどりは
先生に笑顔を向けて
うなずいた

『でももう部屋に
戻るんだぞ。
今度は俺じゃない
先生に見つかったら
お前らだけ
外出禁止になるぞ』

『マジでぇ!?』

わたしとみどりは
声を合わせた

『だから、早く戻れよ』

そう言ってポケットから手を出して、わたしと
みどりの頭を
ポンッとたたいた

『おやすみ、先生』

またわたしとみどりは
声を合わせた

『おやすみ』

先生は笑顔で
答えてくれた

『先生に会えて
良かったね』

部屋に入る前に
みどりが言った

『うん…』
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