笑顔の向こう側 ~先生とわたしの軌跡~
『あたしとしまっちは
生徒と教師じゃ
なかったら、出会って
なかったんだよね』

『うん。わたしだって
生徒と教師じゃ
なかったら、先生と
出会ってなかったよ』

『こんなに辛い思いを
するくらいなら
出会いたくなんか
なかった』

みどりの頬の涙が
月に反射した

『そんな事言っちゃ
ダメだよ。しまっちが
いたから、みどりが
成長出来たんじゃない。辛い思いしたかも
しれないけど
楽しい思い出もいっぱいあったはずだよ』

『あたし、夏海にも
辛い思いさせたし
しまっちと先生の
関係がぎくしゃく
しちゃったら
どうしよう…』

『ダメな方にばかり
考えたって、どうにも
ならないよ。今は前に
進むしかない』

『わかってるけど…。
でも、あたしはそんなに器用な人間じゃない』

みどりの涙は
わたしの涙も誘った

わたしが今みどりに
してあけられる事は
何もない

ただこうして、一緒に
泣いてあげる事くらい

そして、傍に居て
慰めてあげる事
くらいしか出来ない

『みどりが辛いと
わたしも辛い。
一緒に泣いてあげる
くらいしか出来なくて
本当にごめんね』

わたしの涙を見た
みどりは、声をあげて
泣いた

『ごめんね、夏海』

何度も言う、その言葉

そのたびに、わたしは
何もしてあげられて
ないと思ってしまう
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