笑顔の向こう側 ~先生とわたしの軌跡~
『腹いっぱいになったら眠くなったよ』

…?

先生は車のシートを倒し横になった

『少しだけ寝かせて』

先生はそう言って
目を閉じた




神様ありがとう

願いが叶った

先生は一瞬にして
寝息をたてた

よっぽど疲れて
いたんだね

無防備な寝顔

愛おしくてたまらない

寝返りをうって
わたしの方に顔を向ける

わたしのドキドキは
頂点に達していた

このまま時間が
止まればいいのに

本気で思った

わたしもシートを
少し倒して、先生の
手に触れてみた

あったかい手

大きい手

少しだけ許して

そしたらまた
好きを隠すから

今だけ、好きを出させて

また頑張れる気がする

一睡もせずに
先生の事を
考えていた事を後悔した

先生の手を握ったまま
わたしは寝てしまった

先生のぬくもりで
安心して
しまったんだろう

ずっと先生の寝顔を
見ていたかったのに

わたしだけが見ていれた大切な時間だったのに

目を開けると
先生と目が合った

寝ぼけながら
記憶をたどる

あ…

先生の手を握ったまま
寝ていたんだ

まだわたしの手は
あったかい

先生の手をしっかり
握っていたから

とっさに手を
離そうとした
< 53 / 383 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop