あくしゅ。
段々とその時が近付いてきた。


思っていたよりも進むのが早く、

もう半分の人が

握手を済ませ会場を後にしていた。


「もうすぐですね、里美さん」


緊張で表情が固くなりながら葵が言った。


「ですね。

 ……どうしよう、

 ドキドキが止まらないです」


里美もまた葵と同様、顔が強張っていた。


小さく見えていたジェイクの姿が

次第に大きく映る。


一つ一つのパーツがはっきりと見えてくる。


それと同時に里美の心臓の

高鳴りが増してくる。


今まで感じたことのない鼓動に、

里美はどうしたらいいか

分からなくなっていた。


この階段を上りきったら

ジェイクと同じステージに立てる。


ジェイクと握手が出来る。


そう思った瞬間、

里美の視界が突然真っ白になった。


身体の力が急激に抜け、

里美はその場に倒れた。


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