あくしゅ。
放心状態でいると

部屋の隅にいたトムが近付いてきた。


「もう、歩けますか?」


「……あ、は、はい」


慌てながら返事をすると

トムはドアの方に手を向けた。


「ドアを出て左に進むと出口です。

 そちらからお帰りください」


そう言いながらトムはドアを開けた。


「あ、ありがとうございました」


里美は頭を深く下げて礼を言った。


「ゆっくり、

 お気を付けてお帰りくださいね」


トムの言葉にもう一度頭を下げ、

里美は部屋を後にした。


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