あくしゅ。
たった数分間ではあったが、

ジェイクと過ごせた時間に

幸せを感じながら、

里美はゆっくりと会場出口へと向かった。


さっきのが夢なのではと

思ってしまうほど全く現実味がない。


ふわふわとした気持ちで

歩きながら会場の外に出たら、

葵がとても不安げに里美を待っていた。


「あ、葵さん」


「里美さん、大丈夫ですか?

 私、すごく心配で……」


今にも泣き出しそうになりながら

葵は言った。


葵の不安を取り払うように

里美は笑顔になった。


「大丈夫!貧血で倒れちゃったみたいで。

 心配かけてごめんなさい」


里美の言葉に安心したのか、

葵もまた笑顔になった。


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