あくしゅ。
「……握手は出来ませんでした。

 けど、スタッフさんに

 プレゼントをお願いしてきました」


里美は正直に言うことが出来なかった。


本当の事を言ったら、

心配をかけてしまった葵に申し訳ないし、

なんといってもジェイクと過ごした数分が

2人のものではなくなってしまいそう

だったからだ。


「残念でしたね。

 でも、プレゼント喜んでくれるといいですね」


「……は、はい」


葵に正直に話せなかった事に心が痛んだ。


複雑な心境で表情も上手く作れずにいると、

葵は徐に鞄から1枚の名刺を取り出した。



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