無口な猫の手懐け方法。
「それじゃあ、今キミたちの担任を呼ぶから待ってて?」
と言い、ゆっくりとソファーから腰を上げた年配の男。
目尻の下がった優しそうな雰囲気だが、どこか威厳も漂わせるその人は、私と隣に座る香月を残して部屋を出て行った。
コロコロ。
「琴美。せめて理事長と話してる時くらいは、アメ舐めるのやめろ」
「…………。」
香月の注意を無視して、私は無言でアメを舐め続ける。
コロコロコロ――…………ガリッ。
そして、噛み砕く。
「今日は一段と機嫌悪いな」
ガリガリとアメを噛み砕く私を、隣から香月が見つめる。