無口な猫の手懐け方法。

「まあ、琴美が言いたい事も解らなくもないが、」


香月のその言葉に、「だったら今すぐ帰らせろ」と口を開きかけるが、



「仕事なんだから諦めるんだな。」


ガリッ!




私が噛み砕いたアメの音が、部屋に響いた。


香月はその音に反応して、目を見開く。


しかし私は無言で、口の中に残っているアメの欠片を舐める。



「怒るほど嫌なのか?」


「…………。」


「でもこれは仕事なわけだし」


「もういい。……諦めた」


「……そうか。」


「うん。」


「…………。」


「…………。」


「……アメ、いるか? レモン味」


「いる。」



私の口の中からアメが無くなったのが分かったのか、それとも私に気を使ったのかは知らないが、香月がアメをくれた。

 
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