無口な猫の手懐け方法。
レモン味。
昨日と同じ包みの袋の中から、丸い薄黄色のアメが顔を出す。
それを見て少し機嫌が良くなった私は、ポイッと口の中に放り込んだ。
コロコロと舌でアメを転がす。
レモン味、やっぱり美味しい。今度買おう。
それからしばらくして、
「随分と待たせてすまなかったね? この二人がキミたちの担任だよ」
と言いながら部屋に入って来たのは、さっき出て行った目尻の下がった優しそうな男性……理事長と、その後ろに若い男の人が二人。
「いえ、大丈夫です。初めまして、黒澤香月です」
香月はソファーから立ち上がると、若い男の二人に軽く頭を下げる。
私も香月に習って立ち上がるが、挨拶やお辞儀はせず、口の中でアメをコロコロと転がしていた。
隣から香月の小さな溜め息が聞こえてきたが、無視して目の前の二人の男を見る。