無口な猫の手懐け方法。
「悪い。そういえば琴美にはまだ言ってなかったな」
「何をだ?」
「そんなに怒るなよ」
「いいからさっさと言え。」
ガリガリ。
「……怒ってるな、琴美。」
アメを噛み砕き始めた私を見て、香月は苦笑いしながら話し始めた。
「えっとだな。こんな時期に二人揃って転入、そして同じクラスっていうのはさすがにそのガード対象にバレかねない訳で、ほら、今回の仕事は本人にはバレないようにって事だっただろ? ……だから、」
「だから何だ?」
「……だからつまり、学年もクラスも別れたほうが良いと思ったんだよ。 それで考えた結果、俺は3年A組で、琴美は1年C組になった訳だ」
ガリガリガリガリガリ――……
「琴美、そんなに怒るなよ。仕事なんだから仕方がないだろ?」
ガリガリガリガリガリガリガリ――……
「……琴美。そのイラつくとアメ噛む癖、止めない? 結構怖いんだけど」
ガリガリガリガリガリガリガリガリガリ。
「…………。」