無口な猫の手懐け方法。
「えっと、もういいかな?」
私はアメをガリガリと噛む砕き、香月はそんな私を見て苦笑していると、少し遠慮がちな声が聞こえてきた。
「すみません。勝手に話し始めてしまって」
すぐに香月は声の主……理事長に謝る。
しかし理事長は「いいんだよ」とゆっくり首を振った。
「でも、そろそろ教室に行ったほうが良いんじゃないかな?」
理事長はそう言うと二人の男を見る。
「そうですね、時間もないですし。それじゃあ、御堂は連れて行きます」
「黒澤香月。お前は俺と来い」
二人はそう言い、斎藤は私に手招きをしながら扉の近くに立ち、斎藤の横に居たもう一人の……多分、香月の担任だろう男は香月を待つことなく、先に部屋を出て行った。
「あ、俺行かないと。
琴美、仕事は別々にやることになりそうだけど、……まあ、頑張れよ?」
香月は私の頭を軽く撫でると、先に行った男を追って部屋を出て行った。