無口な猫の手懐け方法。
まるで子供扱いだ。
ちょうどその時、
チーンだかポーンだか分からない音が鳴り、乗っていたエレベーターの扉がゆっくりと開いた。
扉の上の沢山の数字は、50のところで光っている。
「着いたぞ、琴美」
男は足元に置いていた鞄を持ち、私の手を引く。
エレベーターを降りると、扉は静かに閉まった。
「さてと、何号室だったっけ?」
男はレモン味のアメが入っていたポケットに手を入れ、小さな四つ折りにされた紙を取り出した。
それは今朝、このマンションまでの道のりと、部屋の場所を書いてもらったメモ紙。
男は部屋の場所を確認すると、紙をもう一度折りポケットに戻した。
コロコロ。
「こっちか。琴美、行くぞ?」
男は口の中でアメを転がしながら、ボーっと立っている私の手を引いて歩きだす。