初恋-はつこい-
「じゃ、真由。私、戻るね」


花帆が優しい笑顔で言った。


その言葉に真由ははっと我に返り、

「花帆、ありがとう。

 リレー、頑張ってね」

とエールを送った。


「うん。

 真由のパワー、借りるからね」


イタズラな表情をしながら言うと、

花帆は校庭へと戻っていった。


左足首に貼られた湿布が

効いているのか、

その周辺がじんじんと

痺れにも似た感覚になっている。


間近で圭輔のラストランが

見られない悔しさの方が、

今の真由の

大きな心の傷となっていた。


……香坂君の走る姿、見たかったなぁ。



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