初恋-はつこい-
「お疲れー、真由」


「お疲れ、杏奈」


フルートを吹いているからか、

杏奈はずっと左肩をさすっている。


「一緒に帰ろ」


今度は左腕をさすりながら

杏奈は言った。


「うん」


真由は素早く帰る支度をして、

杏奈と一緒に音楽室を出た。


ずっと座りっぱなしだったせいか、

腰がまるで

おもりが入っているかのように

ずしりと重い。


「コンクールとはいえ、

 こんな時間まで練習なんて

 キツイよね」


だるそうに杏奈が言う。


「そうだね。

 でも、最後だし、

 後悔はしたくない、な」


真由が思いを込めながら言うと

杏奈は深く頷いた。



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