初恋-はつこい-
「もしかしたら、

 何か香坂君と進展があるかもね」

杏奈の言葉に真由はどぎまぎした。


「そ、そんな事ないってば」


「わからないよー。あるかもよー」


杏奈のいたずらな言葉に

真由はあたふたした。


ふと、

真由はある事を思い出し急に顔色が曇った。


「ん、どうしたの、真由」


それを感じとり、

杏奈は心配そうに真由を見る。


「ううん、何でもない」


あの時、

香坂君を見つめる真由をキッと睨んだ、

玲子の存在を思い出したのだ。


とても鋭い視線に今でも真由の心は震えていた。


「本当に何にもなかったの?」


「うん。大丈夫」


心配する杏奈に

真由はぎこちない笑顔を見せた。


「ん、ならいいけどさ……」


腑に落ちないといった表情を浮かべながら

杏奈は言った。


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