初恋-はつこい-
「はい、お兄ちゃんいますよ。

 今、かわりますねっ!」


詩織の天真爛漫な笑顔が

手に取るようにわかる返事だ。


そして、受話器から

保留音が流れ始めた。


真由は小さく息を吐き、

杏奈たちを見た。


「どう?香坂君、いるって?」


杏奈が食い入るように

真由を見ながら問いかける。


真由はこくんと頷き、

「詩織ちゃんが、

 今かわってくれるって」

と言うと、杏奈が

右手の親指をピンと立てて

にっこり笑った。


真由はどうにか

早まる鼓動を抑えようと、

静かに小さく深呼吸を繰り返す。


その時、

受話器から流れていた

保留音がぷつっと止み、

あの穏やかな声が聞こえてきた。


「もしもし……菅野さん……?」



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