初恋-はつこい-
「家まで送ってくよ」


真っ直ぐ前を向きながら

圭輔がぽつりと言う。


「ありがとう」


真由はそっと

圭輔の方を見た。


いつも学校で見せる顔とは

全く違い、

気のせいか頬がほんのり

染まっているように

真由には見えた。


初詣、

一緒に行ってくれてありがと……


真由はその横顔に向かって

心の中で呟いた。


真由の歩調に合わせ

ゆっくり歩くこと15分。


二人は真由のマンションの

入口に着いた。


「香坂君、ありがとう。

 もう、ここでいいよ」


真由はにっこりと微笑み、

繋いだ手を解こうとした。


しかし、

圭輔はその手を握り返し、

「いや、家の前まで送るよ」

と言い、エレベーターへと

歩き出そうとした。


その時、真由は

背中にずしりと重い衝撃を受け、

よろめきその場に

倒れてしまった。



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