初恋-はつこい-
真由の志望校であり、

今日の入試会場である

小宮南高校。


すでに校門から

ピリピリとした空気が

張り詰めている。


その雰囲気に飲まれないように、

真由と杏奈は

一度大きく深呼吸をしてから、

校門をくぐった。


そして昇降口で靴を履き替えると、

受験票の番号順に

割り振られている教室へと入った。


桜野中の生徒は全員同じ教室だ。


真由は170番の席に着くと、

肩掛けバッグから

筆記用具と受験票を出し、

机の隅にそっと置いた。


そしてバッグの奥にある

栞を手にした。


修学旅行の時に圭輔から貰った

和紙で出来た紅葉柄の栞。


真由は両手で栞を握り締め、

その手を胸に当てた。


……どうか、

香坂君と一緒に

合格できますように……


心の中で祈り、

そっと手を胸から離す。


そして暫くの間、

その栞をじっと眺めていた。



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