初恋-はつこい-
「あ、あの……ね。

 香坂君に、

 渡したいものがあって……」


顔を真っ赤にさせながら

真由が言う。


その真由の姿を

圭輔は真剣な眼差しで見つめる。


真由は今までにない程の

震える手で、

肩掛けカバンの中から

チョコの箱を取り出した。


それをそっと両手で持ち、

ゆっくりと圭輔の前に差し出した。


「こ、これ……なの……」


聞き取れないんじゃないか

という程の

小さな声で真由は言う。


圭輔は目の前に差し出された

箱を見つめる。


箱を持つ真由の手が

小刻みに震えているのが見えた。


圭輔はゆっくりと手を伸ばし、

真由の手ごと包み込んだ。


「ありがとう、菅野」


優しくて温かい

圭輔の手の温もりに、

真由の鼓動がどんどんと早まる。




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