初恋-はつこい-
真由はゆっくりと

圭輔へと近付く。


圭輔もまた

真由へと歩き始める。


そして30センチ程近付いた所で

お互い立ち止まった。


「菅野」


圭輔の声に真由の鼓動が早まる。


圭輔は小さく息を吐くと

ゆっくりと話し始めた。


「あの時の返事、

 まだしてなかったから……」


あの時―――


バレンタインに渡した

あの手紙の返事。


その事だと分かった瞬間、

真由の身体が急激に熱くなる。


「へ、返事……?」


真由が小さな声で呟くと

圭輔はゆっくりと頷いた。


「菅野、ありがとう。

 嬉しかったよ」


嬉し“かった”……?


圭輔の語尾が

過去形な事に気付いた真由は、

圭輔から視線をそらした。



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