初恋-はつこい-
真由と杏奈は

音楽室の隣にある音楽準備室へ行き、

それぞれ担当する楽器を手にした。


そしてもう一度音楽室へと入り、

パート毎の席へと別れて座った。


杏奈のさっきの言葉のお陰で

少し和らいだとはいえ、

やはり部員の冷たい視線が苦しい。


「こんな雰囲気で仮入部だなんて……。

 そんなの無理だよ……」


楽器を準備しながら真由は呟く。


今にも泣きそうな真由に

ゆっくりと一つの影が近付いてくる。


「菅野先輩」


その声に振り向くと、

詩織が無表情で立っていた。


「あ、詩織ちゃん」


真由は詩織に優しい笑顔を見せる。


しかしその後の詩織の言葉に

真由はショックを受けた。


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