Sweet Life
其の二
再び車に乗り
何で今この時に数学の成績なのよ。
絶対に嫌がらせだ。
「まだむくれてんのか?」
「だって樹が」
「数学出来ないお前が悪い。国語とか日本史世界史はいい成績取ってんだろ」
「だ、だって数学だよ。数字だけならまだしもややこしい言葉まで出てくるし」
「ややこしい言葉って微分積分とかか?」
「サインコサインタンジェントなんてまるで魔法の呪文だし漸近なんてそんな言葉自体聞いたことないわよ。数学なら数字だけにしてもらいたいもんだわ」
ホントに理解不能なんだから。
「何で樹は数学の先生なんかになったの?」
数学の先生になりたがる人がいるのが私には信じられないんだけど。
「何でって…まぁ、数字には強い方だし数学ってはっきりしてるじゃん」
「……」
「国語とかなら、こういう風にもとれるしああいう風にもってか、その文章の読み取り方はみんな違って当たり前なのに学校では違うだろ」
う~ん確かに。
そりゃ文法とかは決まりがあるけど読解力てか感じ取り方は違うよね。
「それに比べれば数学は答えは一つだ。誰の目から見ても導き出される答えはな」
「樹は白黒はっきりしてんのが好きなんだね」
「ん?あ~そうかもな」
「やっぱり頭がいいんだよ」
「まあな」
否定しないんだ。
樹の辞書には『謙遜』て言葉はないのかも。