結ばれた夜
「…名前は?」
「ヒミツ」
名前を言わないその男は、
人差し指をネクタイにかけて、シュルリ…と、外した。
彼以外の人に初めて抱かれる夜。
捨てられた女が、浮気相手になった夜。
何やってんだろって気持ちと、どうにでもなれって気持ち。
彼とは…
違う愛撫。
違う右手。
ふと、その人の動きが止まった。
「他の事考えんな」
そう言うと、ネクタイを拾い、それで私に目隠しをした。
視界を遮られた私は、
その男の息づかいと、自分から洩れる声、擦れるシーツの音で翻弄され、脳が犯されたように初めての感覚を覚えた。