114歳の美女
 「そんなに急がんでもええのに。あれが114歳か。明治2×年生まれでも、ときさんやったら妻と離婚して、いますぐ結婚したいわあ。それにしても、ええ女やなあ。振るい付きたいわ」


 古田がときの後ろ姿を見送りながら、思わず本音を口にした。

 智也が古田を見ると、口元がにやけている。


 「課長」
 「・・・」

 「課長」

 「何や・・・。あっ、そうや。仕事を思い出したわ。これで失礼するわ。後の事は俺に任せとき。ほな、大事にな」

 「課長、そんなに急がなくてもいいのに」


 古田は急ぎ足で病室から出て行った。
 智也は呆れた顔をして、古田の後ろ姿を見送っていた。


 (それにしても、ときさんは優しい人だ。気が短くて怖い所もあるけど。僕の下の世話までしてくれるのだから。感激!もしかして、結婚してくれるかも。四条大橋から飛び下りて正解だったかな)


 智也は尿瓶を持ったときの姿を思い起こして、ニヤリとした。





 
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