114歳の美女
 3日ほどして、ときが見舞いに訪れた。


 相変わらず、ときの和服姿は美しかった。


 智也は課長の古田が見舞いに来ないように、心の中で熱烈に祈った。

 「お怪我はどうどすか」
 「痛みは大分増しになりました」

 「それは、何よりどす。用事があったら、遠慮なく言っておくれやす。トイレは大丈夫どすか」

 「あっ、先日は大変お世話になりました。ときさんに下の世話までさしてしまって、恐縮です」

 智也が礼を述べた。

 「遠慮せんといておくれやす」

 「実は、ベッドからやっと解放されまして。歩行器を使ってトイレだけは、何とか一人で行けるようになりました」


 ときがベッドのそばに置いてある歩行器に目をやった。





 
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