114歳の美女
5話 清水の舞台
 智也は10日位で病院を退院した。

 仕事が山のように積もっている。

 翌日から、智也は松葉杖を付いて仕事に出る事にした。

 「課長、長い間ご迷惑をお掛けしました。また、頑張りますので、よろしくお願いします」

 松葉杖を付きながら、智也が深々と礼をした。

 「大丈夫か。余り無理するなよ。あれから、ときさんは見舞いに来てくれたのか」

 「ああ、2度ほど来てくれました」

 「下の世話までするのだから、びっくりしたよ。お前に気があるのじゃないか。いっその事、結婚しちまえば。臍の緒だって、亭主になれば、簡単に手に入るだろう」

 「課長、臍の緒の件は勘弁して下さいよ。それで、四条大橋から飛び下りるはめになったのですから」

 智也が困った顔をした。

 「そうだったな。悪い。悪い。臍の緒が手に入らないとすると、ときを京都の顔にするのは無理だな」

 「もう一度、1から考え直してみます」
 「その件はお前に任すから、後はよろしく」


 智也は山のように積まれた仕事を片付けながら、頭の片隅でときの事を考えていた。





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