114歳の美女
 約束の日。


 ときは待ち合わせ時間よりも早めに、東座のすぐそばにいた。

 四条大橋はこの時間、人通りが多かった。
 橋の中央辺りで、ときが立ち止まった。

 「この辺りのはず」

 ときが橋から下を覗いた。


 「ここから飛び下りたとすれば・・・」
 「死ぬか?」


 「運が悪ければ、その可能性も無いとは言えない」

 「運が良ければ」


 「橋の上から飛び下りる経験があれば」


 「助かる。怪我位はするかも」
 「あの野郎。したたかな野郎だ」


 ときは鴨川を眺めながら、独り言を連発していた。


 (これを証として認めてやるか。甘い。じゃ、別の要求をするか。それでは、厳し過ぎる。この高さだぜ。少々甘くても勇気に免じて認めてやれよ。なあ、とき姐さん。じゃ、そうするか)


 川を覗きながら、ときが心を決めた。





 
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