114歳の美女
 智也は次の機会に、人生の大勝負に打って出る決意をしていた。


 (先日は、四条大橋を歩いたばかりに、飛び込んだ動悸を探られ、思いを打ち明ける事が出来なかった。今度こそは・・・)


 心が決まると、智也はときに電話を掛けた。


 「もしもし」
 「村島です」


 (ついている。うるさい婆さんじゃないぞ)

 智也はニヤッと微笑んだ。


 「ときさん、お願いします」


 「ときさん、申し訳ございませんが、生憎伝える事はできませんので」

 「どうしてですか」


 「お義母さんからきつく言われてますので、では、失礼・・・」


 「ちょっと待って下さい」

 「ツーツーツー」


 電話は相手方から一方的に切られていた。


 (畜生。婆あめ。人生の大勝負が掛かっているというのに。邪魔しやがって)


 智也は腹立ちを抑えられなかった。





 
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