114歳の美女
 ときは祇園石段下から、重要文化財の西楼門を見上げていた。
 
 「いつ見ても立派やこと」
 
 ときは石段下から眺める八坂神社が、京都らしくて一番好きだった。
 
 西楼門は1489年(明応6年)に竣工。四条通りに面し、その容姿の美しさで全国に知られている。

 「朱色が綺麗ですね」

 声を掛けたのは智也だった。


 「ほんまどすな。どれだけ見ても、見飽きまへん」
 「ときさんみたいですね」

 「また」


 ときが微笑んだ。


 今日のときは、薄いグレーの色無地の着物。桃色を基調に、薄桃色の小さな蝶柄の帯。濃い桃色の半襟。

 全体的にはシック。が、襟元の濃い桃色が、ひときわ色っぽさをかもし出していた。






 
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