114歳の美女
 「では、行きましょうか」


 智也がときに声を掛けた。

 「いったいどこへ」
 「ときさんなら、そのうちすぐにわかりますよ」

 二人は目的地に向って歩き始めた。
 八坂の塔がすぐそばに。


 「ここから見る八坂の塔は美しいどすな」


 ときが歩を止めて、八坂の塔をうっとりと見詰めている。

 「本当、美しいなあ」


 八坂の塔を背景に。
 智也が携帯電話のカメラで、ときを撮影した。


 「やっぱりときさんを京都の顔にしたかったな」


 角度を変えて撮影しながら、智也が思わず本音を口にした。

 「まだ、夢みたいな事を・・・。呆れたお人どすな」

 そう言って、ときがさっさと先へ歩き出した。


 「行き先は、わかるのですか」


 ときの後ろから、智也が言った。






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