114歳の美女
 「馬鹿にしたらあきまへんぇ。ここまで来たら目的地はひとつ。ここはうちの舞台どす」


 「さすが、とき奴姐さん」


 ときはすでに、智也の行きたい所の目星が付いていた。


 二人は三年坂へ。

 この坂は、坂の上の清水にある子安観音へ「お産が寧か(やすらか)」でありますように、と祈願をする為に登る坂である事から、産寧坂とも呼ばれている。

 ここには、土産物店、陶磁器店、料亭などが建ち並んでいる。

 
 二人は京焼・清水焼『明治堂』の暖簾を潜った。

 店内には、湯呑、ご飯茶碗、カップ類、酒器、茶器、花器、皿、鉢、置物まで、様々な清水焼が所狭しと展示されている。

 ときは店内をぐるりと一周して、もう一度ご飯茶碗コーナーの前へ行った。


 「何か欲しい物がありましたか」


 智也が尋ねた。


 「ええ・・・」
 「どれですか」


 「な・い・しょ」


 ときの視線の先を智也が追った。





 
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