114歳の美女
 二人は拝観料を払って、清水寺の舞台で有名な本堂へ。


 「どうしてここへ」


 ときが智也の顔を見て尋ねた。

 「それを言う前にこれを見てくれませんか」


 智也がブレザーの内ポケットから、白い封筒を取り出した。
 表には、辞表の二文字が。


 「これ、辞表どすか。何で・・・」
 「僕の目に見える証しです」

 「目に見える証し」


 ときが智也の目の奥を見詰めた。


 「役所を辞めれば、臍の緒なんか、僕には何の関係も無いはずです」

 「別に辞めなくても」


 「いいえ、清水の舞台から飛び下りないと、僕の本心をときさんに伝える事が出来ません」


 「そこまでしなくても、うちには・・・」
 「明日、辞表は役所に提出するつもりです」


 智也は市役所を辞める決意をしていた。






 
< 146 / 321 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop