114歳の美女
 「何や、この茶碗は」
 「もらい物どす」
 

 「これ、夫婦茶碗やおへんか。まさか・・・。結婚をする気か」


 二つの茶碗を、吉のが見比べている。
 

 「結婚したらいけまへんのか。うちの自由どす」
 

 吉のの仕打ちにムカッときたときが、言ってはいけない事を、はっきりと口に出した。


 「何どすて。結婚するやて。よくもそんな事がヌケヌケと言えたもんどすな。実の母親の遺言を忘れたんか」


 「忘れておへん。けど、結婚したらいかんとは、言われておへん」


 「結婚したら子が出来るのがわからへんのか。あては、絶対に許すさへんからな」


 「子供は作りまへん。お家はんが許さんかて、うちは結婚をしまっさかい」


 ときが真っ向から吉のに口答えをした。生まれて初めての、吉のに対するときの反抗だった。


 「強情な子やな。あてがこれだけ反対しても、言う事きかんのやったら、勝手にし!」


 吉のは心底腹立たしかった。






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