114歳の美女
 (こんなしのぶはんを見た事がない)


 ときはしのぶの覚悟を思い知らされた。


 (こうなれば、星田はんと見詰め合って寝るか。手を握るのも悪くない)


 ときはやすらかに眠りに就くことを想像していた。


 ときが端に智也の布団を敷いた。


 その隣に、ときの布団を並べようとした時、しのぶが前に仁王立ちになった。
 


 「ここはときさんやない。ここには、私が寝ますので」
 


 これが、吉のの過酷な注文。しのぶは威圧的な声で、吉のの注文を無事に言い終えた。
 

 「ひどい。ひど過ぎる。うちらは、うちらは、新婚どす」

 ときが血相を変えてしのぶに文句を言った。

 
 「文句があるのやったら、姑に言って。これは、姑の命令や」

 しのぶが心を鬼にした。


 「鬼や。鬼や。鬼や。あんた等には、人間の気持ちが通ってへん。鬼や・・・」



 ときは泣きながら、怒りをしのぶにぶつけた。

 智也は一部始終を、ただ呆然と見ていた。


 しのぶは自分の布団と、その隣にときの布団を敷いた。





 
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